設備投資循環：10年周期の景気変動を読み解く
投資をしたい
先生、「設備投資循環」ってどういう意味ですか？
投資研究家
良い質問ですね！ 「設備投資循環」は、企業が工場や設備にお金を使う投資活動が、約10年の周期で景気を上下させるという考え方です。分かりやすく言うと、企業が積極的に投資する時期は景気が良くなり、投資が減ると景気も悪くなるという循環のことです。
投資をしたい
なるほど。つまり、企業の投資活動が景気に影響を与えるってことですね。でも、なんで約10年周期なんですか？
投資研究家
それは、設備の寿命と関係があると考えられています。設備はだいたい10年くらいで古くなって新しいものと交換する必要が出てくるので、そのタイミングで投資が増えたり減ったりすることで景気にも波ができるというわけです。
設備投資循環とは。
「設備投資循環」とは、企業による設備投資が景気に与える影響をサイクルとして捉えた投資用語です。およそ10年周期で循環し、フランスの経済学者であるジュグラー（J.C.Juglar）によって提唱されました。そのため、ジュグラーの波、ジュグラー循環、主循環、中期波動などとも呼ばれています。
設備投資循環とは？
企業が事業を行う上で、生産設備や工場などの設備への投資は欠かせません。そして、この設備投資は景気に大きく影響を受けるだけでなく、景気を左右するほどのインパクトを持っています。設備投資が増えれば、新たな設備を作るための需要や、設備を使う人材の需要が高まり、経済活動が活発になります。逆に、設備投資が減ると、需要が減少し、経済活動は停滞してしまいます。この設備投資の増減が、およそ10年周期で繰り返されることを設備投資循環と呼びます。
10年の周期が生み出す景気変動
景気は常に変動を繰り返しており、その周期は数十年単位で捉えられる「コンドラチェフの波」、数年単位で訪れる「ジュグラーサイクル」、そして在庫投資の変動が約3～5年周期で景気に影響を与える「キチンの波」など、様々なものが知られています。中でも、約10年の周期で訪れる景気変動は「設備投資循環」と呼ばれ、企業の設備投資が景気変動に大きな影響を与えるという考え方です。
この設備投資循環は、企業が設備を更新したり、新たな設備を導入したりするタイミングに関係しています。好況期には企業の業績が向上し、生産能力を増強するために積極的に設備投資を行います。この投資が新たな雇用を生み出し、さらに需要を喚起することで景気は拡大していきます。しかし、設備投資には限界があり、過剰な投資は供給過剰を引き起こし、やがて景気は後退期へと転じていくのです。設備投資が減速すると、雇用や需要は減少し、景気は悪化していきます。
このように、設備投資循環は景気の波を作り出す大きな要因の一つとなっています。設備投資の動向を分析することで、今後の景気動向を予測する手がかりを得ることができると言えるでしょう。
ジュグラー循環の歴史と影響
– ジュグラー循環の歴史と影響
景気は常に一定ではなく、好況と不況を繰り返しながら推移しています。中でも約9年から11年の周期で訪れる中長期的な景気循環を「ジュグラー循環」と呼びます。これは19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍した経済学者、クレマン・ジュグラーにちなんで名付けられました。ジュグラー循環は、企業の設備投資が活発化する時期と停滞する時期が交互に訪れることで生じると考えられています。
18世紀後半の産業革命以降、技術革新が世界経済を大きく変革してきました。新しい技術や製品が開発されると、企業は生産性を向上させ、市場競争力を高めるために積極的に設備投資を行います。この設備投資の波が、経済成長を牽引し好況期をもたらします。しかし、設備の更新が一段落し、需要が飽和状態に達すると、設備投資は停滞期に入ります。その結果、経済成長は鈍化し、不況期へと突入するのです。
ジュグラー循環は歴史的に見て、鉄道、電力、自動車、情報通信技術といった革新的な技術の登場と普及と密接に関係してきました。これらの技術革新は、社会や経済構造を大きく変えながら、同時に大きな景気循環を生み出してきたのです。
現代においても、情報通信技術の進化や環境問題への対応など、新たな技術革新が次々と生まれています。これらの技術革新は、今後のジュグラー循環にも大きな影響を与える可能性があります。ジュグラー循環を理解することで、私たちは中長期的な視点に立って、経済の動向を予測し、企業経営や投資戦略に役立てることができるでしょう。
設備投資循環と投資戦略
設備投資循環は、企業の設備投資活動が約10年周期で活発化と停滞を繰り返す現象です。景気動向と密接に関係しており、投資戦略を立てる上で重要な要素となります。
設備投資循環の上昇局面では、企業の業績拡大期待が高まり、株式市場全体が上昇傾向を示すため、積極的に株式投資を行うことが有効です。特に、設備投資の恩恵を受けやすい製造業や資本財セクターに注目すると良いでしょう。
一方、設備投資循環の下降局面では、企業業績の悪化懸念から株式市場は低迷する傾向にあります。この時期には、キャッシュポジションを増やしてリスクを抑制したり、景気変動に強いディフェンシブセクターへの投資を検討するなどが考えられます。
ただし、設備投資循環はあくまで目安であり、常に10年周期で正確に動くわけではありません。他の経済指標や世界情勢なども考慮しながら、柔軟かつ慎重に投資判断を行うことが重要です。
今後の景気予測と設備投資循環
設備投資循環は、約10年の周期で景気変動に影響を与える要因として知られています。過去のデータを観察すると、設備投資の拡大期には景気もまた上昇傾向を示し、逆に設備投資が縮小する局面では景気後退が確認できます。
では、今後の景気予測において、設備投資循環はどのように解釈できるでしょうか。 現在、世界経済はコロナ禍からの回復途上にあり、設備投資の動向が注目されています。 一方で、地政学リスクの高まりやサプライチェーンの混乱など、先行き不透明な要素も存在します。
これらの要素を総合的に判断し、今後の設備投資の動向を予測することが、景気予測の精度を高める上で重要となります。 例えば、企業の業績予想や設備投資計画、政府の経済政策などを分析することで、設備投資の将来的な方向性を見極めることができます。
ただし、設備投資循環はあくまでも景気変動の一つの要因に過ぎず、他の経済指標と合わせて多角的に分析する必要があります。 設備投資循環を一つの指標として活用することで、より精度の高い景気予測が可能となり、企業の経営戦略や個人の投資判断に役立てることができるでしょう。