企業年金運用担当者必見！「許容繰越不足金」を解説
投資をしたい
先生、「許容繰越不足金」って、簡単に言うとどういう意味ですか？ 企業年金とかで使う言葉みたいなんですが…
投資研究家
そうだね。「許容繰越不足金」は、簡単に言うと「企業年金のお金がちょっとだけ足りなくても、許される範囲」のことだよ。 年金って将来支払うお金を積み立てておくものだけど、運用がうまくいかなくて一時的にお金が足りなくなることもあるんだ。 でも、不足が少しだけであれば、すぐに資金繰りが行き詰まってしまうわけじゃないよね？ だから、法律である程度の範囲で不足を許容しているんだ。それが「許容繰越不足金」だよ。
投資をしたい
なるほど。でも、どのくらいまでなら許されるんですか？
投資研究家
いい質問だね。 許容される範囲は法律で決まっていて、大きく分けて二つあるんだ。 一つは、将来支払う年金額を計算して、その金額の20年分に対して、あらかじめ決めた割合（15%以内）を掛けた金額まで。もう一つは、年金のお金を運用して増やしたお金（責任準備金）に対して、あらかじめ決めた割合（15%以内、細かく計算している場合は10%以内）を掛けた金額まで、となっているんだ。
許容繰越不足金とは。
「許容繰越不足金」とは、厚生年金基金や確定給付企業年金において、運用で損失が出た場合に、将来の年金支給に備えるために積み立てなければならないお金（責任準備金）をどれだけ下回っても許されるかを示す限度額のことです。
具体的には、次のいずれか小さい額となります。
* 今後20年間支払うべき年金の現在価値に、規約で定められた割合（最大15%）を掛けた額
* 責任準備金に、規約で定められた割合（数理的評価を行っている場合は最大10%、それ以外は最大15%）を掛けた額
どの程度の金額を許容するかは、それぞれの年金制度の規約で決められています。（根拠法令：DB法施行規則第56条、厚生年金基金「財政運営基準第4財政計算一（3）変更計算オ責任準備金の確保」）
1. 許容繰越不足金とは？
企業年金を運営していく上で、「許容繰越不足金」という言葉は度々耳にするかと思います。しかし、その言葉の響きから何となくイメージはできても、具体的にどのようなものなのか、きちんと理解しているという方は意外と少ないのではないでしょうか。
この章では、許容繰越不足金の定義や算出方法、企業年金制度における位置付けなどを詳しく解説していきます。基本的な知識を身につけることで、より深く企業年金運用について考えていきましょう。
2. 許容繰越不足金の算定方法
許容繰越不足金は、複雑な計算式を用いて算出されます。ここでは、その算定方法について詳しく解説していきます。
まず、「平均給与支払額」をベースに、「将来の給与上昇率」や「割引率」といった要素を考慮して、「退職給付債務現価」を計算します。
次に、企業年金基金に積み立てられている「年金資産の現在価値」を算出します。
最後に、「退職給付債務現価」から「年金資産の現在価値」を差し引いた金額が、許容繰越不足金となります。
これらの計算は、専門的な知識や経験が必要となるため、通常はアクチュアリーと呼ばれる年金数理の専門家に依頼することが一般的です。
また、厚生労働省が公表している「企業年金制度に関する会計基準」には、許容繰越不足金の算定方法に関する詳細な規定が記載されていますので、そちらも参考にしてください。
3. 許容繰越不足金が企業年金に与える影響
許容繰越不足金は、企業年金の安定運用と企業の財務状況のバランスを取るための制度です。しかし、その影響は多岐にわたり、短期的にはプラスの影響を与える場合でも、長期的にはマイナスの影響が出る可能性も考慮しなければなりません。
まず、許容繰越不足金は、企業が一時的に不足している年金資産を穴埋めできるため、企業の財務負担を軽減する効果があります。これは、企業が資金繰りの柔軟性を高め、設備投資や研究開発など、他の事業活動に資金を充当することを可能にするというメリットがあります。
一方で、許容繰越不足金は、将来の給付原資が不足するリスクも孕んでいます。不足金が解消されずに積み上がれば、最終的に企業が大きな負担を強いられる可能性もあります。また、許容繰越不足金の存在は、従業員の年金に対する不安感を増大させる可能性も否定できません。
企業年金運用担当者は、これらの影響を十分に理解し、中長期的な視点に立った運用計画を策定する必要があります。また、従業員に対しては、許容繰越不足金に関する制度や運用状況を丁寧に説明し、透明性を高めることが重要です。
4. 許容繰越不足金に関する法規制
企業年金制度は、従業員に対する長期的な福利厚生の一環として重要な役割を担っており、その健全な運営は企業にとって非常に重要です。年金財政の安定化を図るための様々な制度設計が求められる中で、「許容繰越不足金」は、企業年金運用担当者であれば必ず理解しておくべき重要な概念です。
この章では、許容繰越不足金に関する法規制について詳しく解説していきます。具体的には、企業年金法における位置づけ、算定方法、計上・償却に関するルールなどを、実務上の注意点も交えながら分かりやすく説明します。これらの知識を深めることで、企業年金の適切な管理体制構築の一助としていただければ幸いです。
5. まとめ：許容繰越不足金を理解し、適切な対応を
企業年金制度において、運用環境の変化などにより年金資産が不足するケースは少なくありません。このような場合に活用できるのが「許容繰越不足金」です。本稿では、許容繰越不足金の仕組みやメリット・デメリット、注意点などを詳しく解説しました。
許容繰越不足金は、短期的な運用損失の影響を緩和し、企業の財務負担を軽減する効果があります。一方で、安易な制度利用は将来的な財務負担の増大や従業員のモラル低下に繋がる可能性もあるため注意が必要です。
企業年金運用担当者は、許容繰越不足金制度のメリット・デメリットを理解した上で、中長期的な視点に立って適切な対応を行うことが重要です。従業員への丁寧な説明も忘れずに行いましょう。