企業年金運用を左右する「予定脱退率」とは？

企業年金運用を左右する「予定脱退率」とは？

予定脱退率とは何か

企業年金は、従業員が老後の生活資金を積み立て、将来受け取るための制度です。しかし、老後まで会社に在籍し続ける人は少なく、転職や独立などで会社を辞める人も多くいます。その際、将来受け取る予定だった企業年金をどの時点で、どのくらい受け取るかによって、企業年金の運用方法が変わってきます。

この、従業員が将来退職する割合を予測した数値のことを「予定脱退率」と言います。

企業年金制度における重要性

企業年金制度は、従業員が老後の生活を安心して送れるよう、企業が長期的な視点で資産を運用し、給付を行う制度です。その運用において、将来の給付額を予測するために重要な要素となるのが「予定脱退率」です。

予定脱退率とは、従業員が様々な理由で企業を退職し、年金制度から脱退する割合を、年齢や勤続年数ごとに予測した数値を指します。この数値は、将来の年金受給者数を予測し、それに応じた年金資産の積立額を決定する上で、非常に重要な役割を担います。

もし、予定脱退率を過小に見積もってしまうと、実際の脱退者数の方が多くなり、結果として年金資産が不足してしまう可能性があります。反対に、過大に見積もった場合には、必要以上の積立金が発生し、企業の財務を圧迫してしまう可能性も。

このように、予定脱退率は、企業年金制度の安定性と企業の健全な経営の両方に大きく影響を与えるため、その算定には高度な専門知識と緻密な分析が求められます。

予定脱退率の設定方法

予定脱退率は、過去の社員の退職状況や企業の将来展望などを加味して、統計的な手法を用いて算出します。具体的な方法としては、大きく分けて以下の３つが挙げられます。

1. -経験率法- 過去の自社の退職データに基づいて、将来の脱退率を予測する方法です。過去のデータが豊富な企業に向いていますが、急激な事業規模の変化や従業員構成の変化には対応できない可能性があります。
2. -標準率法- 厚生労働省が公表している標準的な脱退率表を用いる方法です。過去のデータが少ない企業や、簡便な方法で設定したい企業に向いています。
3. -経験率法と標準率法の併用- 経験率法である程度算出した上で、標準率法を参考に調整を行う方法です。多くの企業で採用されており、自社の状況を反映しつつ、より精度の高い設定が可能となります。

どの方法で設定するかは、企業の規模や業種、データの有無などを考慮して決定する必要があります。また、定期的に見直しを行い、実際の脱退状況と乖離がないか確認することが重要です。

予定脱退率の変動要因

予定脱退率は、様々な要因によって変動します。ここでは、主な変動要因とその影響について解説します。

まず、企業の業績や経済状況が挙げられます。企業業績の悪化や経済の低迷は、従業員の退職や転職を促し、予定脱退率の上昇に繋がることがあります。逆に、好況期には雇用が安定し、予定脱退率は低下する傾向があります。

次に、企業の人事制度も重要な要素です。早期退職優遇制度など、退職を促進する制度を導入した場合、予定脱退率は上昇します。また、中途採用を積極的に行う企業では、新卒入社社員と比較して離職率が高いため、予定脱退率に影響を与える可能性があります。

さらに、社会全体の動向も無視できません。例えば、転職が一般的になった現代社会では、終身雇用の意識が薄れ、以前と比べて予定脱退率は高くなる傾向にあります。また、少子高齢化の進展に伴い、企業年金の加入者数は減少傾向にあり、これも予定脱退率に影響を与える可能性があります。

このように、予定脱退率は様々な要因によって変動するため、企業はこれらの要素を考慮しながら、適切な年金制度の設計や運用を行う必要があります。

予定脱退率が年金財政に与える影響

企業年金は、従業員が将来受け取る年金を計画的に積み立てていく制度ですが、その運用において「予定脱退率」は非常に重要な要素となります。予定脱退率とは、従業員が退職や転職などにより、年金制度から脱退する割合を予測した数値のことです。

この予定脱退率は、年金財政に大きな影響を与えます。もし予定脱退率が低く見積もられていた場合、実際よりも多くの従業員が在籍し続けることになり、年金資産の積立不足が発生する可能性があります。逆に、予定脱退率が高く見積もられていた場合には、必要以上に積立が行われ、運用効率が低下する可能性もあります。

企業は、従業員の年齢や勤続年数、業界の動向などを考慮し、適切な予定脱退率を設定する必要があります。もし予定脱退率が実態と乖離していると、年金財政の悪化や、将来の年金給付額の減額などに繋がる可能性もあるため、注意が必要です。