カバー・ディールとは?投資における役割と仕組み
投資をしたい
先生、投資の用語で『カバー・ディール』って、どういう意味ですか?
投資研究家
良い質問だね!『カバー・ディール』は、顧客の取引の反対売買をして、自分の持ち株数を調整するための取引のことだよ。
投資をしたい
顧客の反対の取引をするって、どういうことですか?
投資研究家
例えば、顧客がA社の株を100株買う注文を出してきたとしよう。証券会社は顧客に株を売ってあげないといけないよね?でも、自分のところではA社の株を持っていないかもしれない。そこで、証券会社は別の市場でA社の株を100株買う。これがカバー・ディールだよ。顧客の注文と反対の取引をして、自分の持ち株数を調整しているんだね。
カバー・ディールとは。
「カバー・ディール」とは、投資用語の一つで、顧客との取引とは反対の売買を行うことで、保有資産の残高を調整する取引のことを指します。
カバー・ディールの基本的な定義
カバー・ディールとは、ベンチャーキャピタルなどの投資ファンドが、すでに投資しているスタートアップ企業に対して、追加投資を行う際に設定する特別な契約のことを指します。スタートアップ企業は、成長の過程で資金調達が必要となる場面が度々訪れます。
初期の段階では、シードラウンドやシリーズAといった形で、新たな投資家から資金を調達することが一般的です。しかし、企業価値が上昇し、多額の資金調達が必要となる成長期には、既存の投資家が主導して資金を提供するケースが増えていきます。これが、カバー・ディールと呼ばれるものです。
顧客取引との関係性
カバー・ディールは、投資銀行や証券会社が、顧客企業との既存の関係をてこに、M&Aや資金調達といった大型案件を獲得するための手法として知られています。具体的には、顧客企業に対して、日頃から調査・分析や助言といったサービスを提供することで信頼関係を築き、その後の大型案件の受任につなげることを目指します。
顧客企業にとっては、すでに取引のある金融機関に大型案件を依頼することで、自社の状況やニーズを深く理解している相手とスムーズに交渉を進めることができます。一方、投資銀行や証券会社にとっては、既存顧客から大型案件を獲得することで、新規顧客開拓に比べて時間やコストを抑えながら、安定的な収益を確保することが可能となります。
このように、カバー・ディールは、顧客企業と投資銀行や証券会社の双方にとってメリットのある仕組みと言えるでしょう。
なぜカバー・ディールを行うのか?
スタートアップ企業にとって、資金調達は事業成長の要です。しかし、シード期やアーリーステージといった初期段階では、実績や担保に乏しいため、従来型の金融機関からの融資はハードルが高いのが現状です。
そこで登場するのが、ベンチャーキャピタルなどによる投資です。彼らは、将来性を見込んでリスクを取って投資を行い、企業価値を高めた後に株式を売却することでリターンを得ます。
しかし、投資家も無制限にリスクを取れるわけではありません。特に経済状況の悪化や予期せぬ事態が発生した場合、投資計画の見直しや資金回収を優先せざるを得ないケースも出てきます。
このような状況下で、既存投資家による「ブリッジラウンド」や、経営陣による「自己資金によるつなぎ融資」など、一時的な資金調達の手段としてカバー・ディールが行われることがあります。
カバー・ディールの実施例
– カバー・ディールの実施例
具体的な事例を通して、カバー・ディールのイメージを掴んでみましょう。
例えば、成長中のAI開発ベンチャー企業があるとします。この企業は、新たな資金調達ラウンドを実施しようとしています。
この時、既存の投資家であるベンチャーキャピタルが、企業価値の評価額がまとまる前に、一定の条件下で、新規発行株式の一部を引き受けることを約束する場合があります。これがカバー・ディールの一例です。
この約束によって、ベンチャー企業は、資金調達をスムーズに進めることができ、新たな事業展開や研究開発に資金を投入することができます。また、他の投資家にとっても、既存投資家が先に投資を決めているという事実が、企業の将来性や投資案件としての魅力を示すシグナルとなり、投資判断の後押しとなる可能性があります。
カバー・ディールに伴うリスクと注意点
カバー・ディールは、スタートアップ企業にとって資金調達手段の一つとして魅力的ですが、当然リスクも存在します。まず、投資家と創業者との間で、株式の評価や将来の見通しについて意見が対立する可能性があります。これは、交渉が長引いたり、最悪の場合、ディール自体が破談する可能性も孕んでいます。また、投資家から過剰な要求を受ける場合もあります。例えば、経営への過剰な介入や、創業者にとって不利な条件での株式の取得などが挙げられます。さらに、短期間での資金調達を優先するあまり、長期的な企業成長に最適ではない投資家と関係を築いてしまう可能性も考えられます。カバー・ディールを検討する際は、これらのリスクを十分に理解し、弁護士や会計士などの専門家のアドバイスを受けながら慎重に進めることが重要です。