ケインズ『一般理論』: 失業と有効需要
投資をしたい
先生、『有効需要の原理』って、具体的にどういうことですか? なんで需要が生産量を決めるんですか?
投資研究家
良い質問だね!例えば、みんながスマホを全然欲しがらないとしよう。メーカーは、売れないスマホをたくさん作るかな?
投資をしたい
ううん、作らないと思います。需要がないのに作っても売れないですもんね。
投資研究家
そうなんだ。企業は、売れると予想する量だけ生産するよね。つまり、みんなが『買いたい!』と思う需要が、実際に作られるスマホの量、つまり生産量を決めることになるんだよ。これが有効需要の原理なんだ。
一般理論とは。
「投資の用語で『一般理論』といえば、ジョン・メイナード・ケインズが1936年に発表した『雇用・利子および貨幣の一般理論』を指します。この本でケインズは、市場経済において失業が発生するメカニズムを解明しようと試みました。彼は、総所得水準が低い状態、つまり失業が発生している状態では、総生産量は低い水準、すなわち過少雇用総生産量にとどまると主張しました。つまり、需要が生産量を決めるという、画期的な所得決定理論を提示したのです。この理論は「有効需要の原理」と呼ばれています。」
ケインズ経済学の誕生
1929年に始まった世界恐慌は、資本主義経済が抱える根本的な問題を露呈させました。従来の経済学では説明できない大規模な失業の発生は、世界中の人々に大きな衝撃を与えました。このような時代背景の中、イギリスの経済学者ジョン・メイナード・ケインズは、1936年に『雇用・利子および貨幣の一般理論』を著し、従来の経済学を根本から覆す新たな理論を提唱しました。これが、後に「ケインズ革命」と呼ばれるようになる、経済学における大きな転換点であり、ケインズ経済学誕生の瞬間でした。
ケインズ以前の古典派経済学では、「供給はそれ自身の需要を生み出す」というセイの法則が信じられていました。これは、生産されたものは必ず売れるため、生産が需要を創造し、市場メカニズムによって完全雇用が達成されるとする考え方です。しかし、世界恐慌による大規模な失業は、この古典派経済学の楽観的な見方を覆しました。
ケインズは、需要が供給を規定すると考えました。人々の需要不足が生産の縮小や雇用削減に繋がり、それがさらなる需要不足を招くという悪循環に陥ると指摘したのです。そして、有効需要の不足こそが不況の原因であると主張し、政府による積極的な財政政策の必要性を説きました。これは、市場メカニズムに任せておけば自動的に完全雇用が実現するという古典派経済学の考え方を否定し、政府が経済に介入することの必要性を示した点で画期的でした。
失業問題への新たな視点
ケインズ以前の経済学では、市場メカニズムが働けば、賃金が調整され、失業は自然に解消すると考えられていました。しかし、1930年代の世界恐慌は、この古典的な理論では説明できない大規模な失業を生み出しました。ケインズは、『一般理論』の中で、この矛盾を解き明かす、全く新しい視点を提示しました。
ケインズは、失業の原因は、有効需要の不足にあると主張しました。有効需要とは、財やサービスに対する需要のことであり、これが不足すると、企業は生産を縮小し、結果として失業が発生するというのです。従来の経済学では、供給が需要を創造するとされていましたが、ケインズは、需要が供給を規定するという逆転の発想を打ち出したのです。
この斬新な視点は、当時の経済学に大きな衝撃を与えました。ケインズの理論は、政府が財政政策や金融政策を通じて有効需要を管理することで、失業を抑制できるという考え方を示唆しており、その後の経済政策に多大な影響を与えました。
総所得と過少雇用
ケインズ経済学の中核をなす『雇用・利子および貨幣の一般理論』は、当時の経済学の常識を覆し、後のマクロ経済学に多大な影響を与えました。本稿では、その中から「総所得と過少雇用」の関係について解説していきます。
古典派経済学では、賃金が労働市場の調整弁として機能すると考えられてきました。つまり、失業が存在する場合、賃金が低下することで労働需要が増加し、結果として完全雇用が達成されるとされてきました。しかし、ケインズはこの考えを否定し、有効需要の不足が失業を生み出すと主張しました。
有効需要とは、財・サービスに対する総需要のことです。ケインズによれば、人々の所得、消費、投資などの経済活動によって有効需要の規模が決まります。そして、有効需要が社会全体の生産能力を下回る場合、企業は生産活動を縮小し、労働者を解雇するため、失業が発生します。
つまり、ケインズ経済学においては、総所得の水準が雇用量を決定する重要な要素となります。総所得が増加すれば有効需要も増加し、企業は生産を拡大し、雇用を増やすため、失業は減少します。逆に、総所得が減少すれば有効需要も減少し、企業は生産を縮小し、雇用を削減するため、失業は増加します。
このように、ケインズは市場メカニズムが自動的に完全雇用をもたらすという古典派経済学の考えを否定し、有効需要の不足が失業を生み出すことを明らかにしました。そして、政府による財政政策などを通じて有効需要を管理することの重要性を説いたのです。
有効需要の原理とは
ケインズ経済学の根幹をなす「有効需要の原理」は、社会全体の生産量や雇用量が、需要によって決定されるという考え方です。古典派経済学では、供給が需要を創造するとされていましたが、ケインズはこれを覆し、需要が供給を規定すると主張しました。
具体的には、人々の消費や投資といった需要が、企業の生産活動や雇用を生み出す原動力となります。需要が不足すれば、企業は生産を縮小し、雇用を削減するため、失業が発生します。逆に、需要が旺盛であれば、企業は生産を拡大し、雇用を増やすため、経済は活性化します。
つまり、有効需要の原理は、需要の増減が経済活動全体に大きな影響を与えることを示しており、ケインズはこの原理に基づき、政府による需要管理政策の必要性を説いたのです。
現代経済への影響
ケインズの『一般理論』は、現代経済学、特にマクロ経済学に革命をもたらし、その影響は現代経済政策にも色濃く残っています。まず、彼の提唱した有効需要の概念は、政府による積極的な財政政策の必要性を説得力を持って示しました。世界恐慌後の不況下、従来の新古典派経済学では説明のつかない大規模な失業の発生に対し、ケインズは有効需要の不足が原因であると喝破しました。そして、政府支出による需要の底上げこそが失業問題解決の鍵であると主張し、その後のニューディール政策など、世界各国の経済政策に大きな影響を与えました。
また、ケインズの理論は、中央銀行による金融政策の重要性を再認識させました。景気調整のために政策金利や通貨供給量を操作する現代の金融政策は、ケインズの理論に基づいて発展してきたものです。さらに、彼の思想は経済学の枠組みを超え、福祉国家の形成にも大きな影響を与えました。政府が積極的に経済に介入し、社会福祉制度を通じて国民生活の安定を図るという現代福祉国家の理念は、ケインズの思想と深く結びついています。
しかし、ケインズの理論は万能ではありません。1970年代のスタグフレーション(不況下のインフレーション)は、彼の理論では十分に説明することができませんでした。それでも、彼の提唱した有効需要、財政政策、金融政策といった概念は、現代経済においても重要な役割を果たしており、その影響力は決して色褪せていません。