経済を紐解く「レオンチェフ表」入門

経済を紐解く「レオンチェフ表」入門

レオンチェフ表とは？

経済の仕組みは、複雑に絡み合った糸のように見え、どこから手をつければいいのか迷ってしまうことがあります。しかし、そんな経済の全体像を一枚の表で表してしまう便利なツールが存在します。それが、今回紹介する「レオンチェフ表」です。

レオンチェフ表とは、ノーベル経済学賞を受賞したワシリー・レオンチェフによって開発された、一国の産業構造を一覧できる表のことです。この表は、横軸と縦軸に同じ産業部門を並べ、それぞれの産業が、他の産業に対してどれだけ財やサービスを供給しているかを示しています。

例えば、農業部門が、食品加工部門に対してどれだけ農産物を供給しているか、建設部門が、製造業部門に対してどれだけ工場建設サービスを提供しているか、といったことが一目でわかるようになっています。

一見複雑そうに見えるレオンチェフ表ですが、その仕組みを理解することで、経済の構造や産業間の関係性をより深く理解することができます。

産業の繋がりを視覚化する

レオンチェフ表は、一見複雑に見える経済活動の構造を、産業間の取引関係に焦点を当てて分かりやすく表したものです。それぞれの産業が、他の産業からどれだけの原材料やサービスを中間投入として購入し、最終的にどれだけ消費や投資に利用されるのかを、一覧で確認することができます。

この表を見ることで、例えば、自動車産業が活発になると、鉄鋼産業や部品製造業など、多くの関連産業にも影響が波及していく様子を具体的に把握することができます。このように、レオンチェフ表は、経済全体における産業の相互依存関係を視覚化し、経済構造を分析するための強力なツールとなるのです。

経済波及効果分析への応用

レオンチェフ表は、特定の産業の変化が他の産業や経済全体にどのような影響を与えるかを分析する「経済波及効果分析」にも活用されます。 例えば、ある地域の自動車産業が活発化すると、その地域における鉄鋼需要の増加、雇用の創出、そして消費の拡大といった波及効果が生まれます。レオンチェフ表を用いることで、こうした複雑な経済の連鎖反応を数値化し、可視化することが可能となるのです。

具体的には、分析対象となる産業の生産増加額をレオンチェフ逆行列に掛けることで、各産業部門への生産誘発額を算出できます。さらに、得られた生産誘発額から雇用や所得への波及効果を推計することも可能です。

このように、レオンチェフ表は経済波及効果分析という形で、政策評価や地域開発計画の策定など、現実の経済問題に対する重要なツールとして活用されています。

レオンチェフ表の実例

– レオンチェフ表の実例

抽象的な説明だけではイメージが掴みにくいレオンチェフ表ですが、具体的な例を見ると、その構造と役割が理解しやすくなります。ここでは、分かりやすくするために、農業、工業、サービス業の３部門だけのシンプルな経済を想定したレオンチェフ表を作成してみましょう。

| 部門 | 農業 | 工業 | サービス業 | 最終需要 | 産出高 |
|—|—|—|—|—|—|
| 農業 | 20 | 50 | 10 | 70 | 150 |
| 工業 | 30 | 40 | 20 | 160 | 250 |
| サービス業 | 10 | 60 | 30 | 100 | 200 |

この表は、各産業が他の産業や最終需要（家計や政府など）にどれだけ供給しているかを示しています。例えば、農業部門は、農業自身に20、工業に50、サービス業に10、そして最終需要に70を供給しています。この合計値である150が農業部門の産出高となります。

このように、レオンチェフ表は、一見複雑な経済活動も、部門間の取引という観点から分かりやすく可視化することができます。この表を分析することで、それぞれの産業が経済全体にどのような影響を与えているのか、また産業間の相互依存関係などを把握することが可能になります。

まとめ：経済分析の強力なツール

レオンチェフ表は、経済活動における産業間の複雑な相互依存関係を明らかにする強力なツールです。生産、消費、そして付加価値の関係性を体系的に示すことで、経済構造の全体像を把握することができます。 特定の産業の変化が他の産業や経済全体に及ぼす影響を分析する上でも、レオンチェフ表は欠かせません。政策立案者は、この表を用いることで、例えば、特定産業への投資がもたらす波及効果を予測し、より効果的な政策を実行することができます。 経済学の基礎知識として、レオンチェフ表とその分析手法を理解することは、経済の仕組みを深く理解する上で非常に役立ちます。